早期退職の理想的なポートフェリオって?・3ステップで個人鑑定級レベルの精度

早期退職を控えている人にとって理想的なポートフォリオはどういったものかかなり気になるものです。

ここでは個人鑑定レベルで・セルフ鑑定できる3ステップの「早期退職者用ポートフォリオの組み方」を紹介しています。

また、ポートフォリオの例として10通り、著名人のポートフォリオも3通り例として挙げていますので参考にされてください。

早期退職の理想的なポートフェリオとは

ポートフォリオの目的は個別銘柄の割合をどのように配分し、収益性を高めていくかにあります。

ココがポイント

以下のように個別銘柄にはそれぞれ固有のリスクやリターンがあり、ポートフェリオを検討すると退職金や資産を複数の銘柄に分散することで資産保全・資産形成のいずれの効率も向上するのです。

極端な例として、全資産を仮想通貨にしている人がいるとしましょう。

仮想通貨のリスクは極めて高く、全資産を預けると仮想通貨が暴落したときに資産がゼロとなりかねません

このため国内債券・国内株式・海外銀行の定期預金などほかの銘柄を保有・資産分散してリバランスを行えば、結果全資産を失うリスクはかなり下げることができます。

 

ココがポイント

よく言われる格言で「卵は一つの籠に盛るな」は、大変貴重な言い伝えです。

早期退職を検討している方はすでに何かしらの資産を保有しており、退職金がそこに追加されたときにすべての資産をどのように配分していくかが課題になるはずです。

資産を生むポートフォリオって何?

早期退職をする上で理想的なポートフォリオを探しにいらした方にとってまず必要なのは、資産が増えやすいポートフォリオとそうでないモノの違いを明確にすることです。

まずはこの2パターンをわかりやすくお示ししたいと思います。

資産が増えやすい人のポートフォリオって?

資産が増えやすい人のポートフェリオは以下のとおり。

資産が増えやすい方が保有している銘柄は、債権・株式・投資信託・純金や収益不動産などの現物資産・リートなど、収益性がある程度見込めるモノで構成されています

収益を生む資産にしていると、以下のように毎年その資産から収益が生まれます。

シンプルにお金が増えやすい人は「収益性資産」を保有しているのです。

それでは逆にお金が増えにくい人のポートフォリオもチェックしてみましょう。

お金が増えにくい人のポートフォリオ

お金が増えにくい人のポートフォリオは以下のとおり。

収益を生まない現預金や不動産」などで構成されているのが特徴です。

 

お金が増えにくい人は収益を生まない現金や預金にしているため、当然低金利などでつく利息もごくわずかです。

お金が増えやすい・増えにくいの明暗を分けるのは、保有銘柄に尽きるお話し。

さて貯金が大好きな日本人でも、保険資産をお持ちの方も多いと思います。

しかしながら保険契約時のシミュレーションほど高い利回りとならず現実的に0.1~1.5%の利回りとなることが多く収益性は決して高いとは言えない資産です。25-30年超えないとマイナスからプラスに反転しない性質をしています。

以下のように現状を正確に把握して早期退職に向けての動きを参考にされてみてください。

年数度のご契約内容案内などで「解約払戻金」を確認、その後のアクション

  • 一時払い保険:プラスに転じるまで温存
  • 月払い保険:プラスマイナスゼロ程度になった頃に支払いをやめ、払い済み保険にするなど何らかの変更をするのを検討⇒同じ金額ならばNISAでインディックスファンドに掛け金を使った方が将来性があり。

平成初期頃の保険契約で利回りが高い契約をお持ちの方もいらっしゃると思います。それについてはお宝保険だと思いますので温存でOKです。

早期退職後のポートフォリオの真の作業や目的は、すでに保有している銘柄のうち温存するもの・整理するもの・新たに契約するものを見極めてご自身にあった配分で保有することにあるでしょう。

お金は大切にしたいことを実現するための手段でそれ以上でもそれ以下でもありません。お金によって実現できることがあれば、退職後の満足度が上がります。

お金を通してパートナーとケンカしたり、お金を失うのが嫌で引きこもり、なんて想像するとなんだか残念です。

でも、ちゃんとお金の準備をすれば何も怖いことはありません。

3ステップで固める・早期退職時のポートフォリオの組み方

それでは早期退職のポートフォリオを検討する上で、以下いくつかのステップに分けてみましたので、スマホや電卓などを片手にじっくり取り組んでみてください。

step
1
ポートフォリオを組む前に・お金の流れと資産を明確にしておく

早期退職のポートフォリオを組む前に、以下のようにお金の流れと資産をリストアップしてできるだけ明確にします。

このリストアップについては、預金明細・金融商品の契約書・クレカ明細などファクトベースで行いましょう。

精度を追求すればするほど、早期退職後のマネープランはクリアになります。明細を確認する作業ができる人は本人のみです!!

グーグルのスプレッドシートを活用すると、エクセルのようにSUM関数が使えたり、オンラインで保存・再度アクセスできるので便利ですよ!

step
2

退職後の生活をどのように送っていきたいのか、その生活を実現するための資金としてお金はどのような配分でポートフォリオを組むのが適切なのか以下でシミュレーションをしたあとに実際に考えて行きましょう。

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step
3
自分のリスク許容度を明確にする

次は自分自身のリスク許容度を明確にします。

今ある資産のうち、「何割失ったら夜も眠れなくなりそうか」「何割失ったらその保有資産のマイページにログインできなくなりそうか」を明確にします。

以下の図で見たようにそれぞれの銘柄資産ごとにリスクがあり、これを踏まえて「何割失ったらリアルに夜も眠れなくなりそうか」を詰めてみましょう。

ハイリスクハイリターン

いつ資産が暴落してゼロになってもおかしくないが、投機的な動きもある。

ミドルリスクミドルリターン

少なくても10年に1度程度は4割ほどの暴落があるが、利回りは3-4%ある場合が多い。

ローリスクローリターン

大きく増えないが安定している。※現預金は額面は一定だが円安インフレ進行で資産価値の目減りが起こりえるのでリスクはゼロでもない

早期退職をする上でのポートフォリオはリスク許容度を明確にすることにある、その例☟

  1. 4000万円の資産があって退職金は2000万円の見込み・トータルの資産は6000万円
  2. 夜も眠れなくなってしまうのは総資産額が5000万円以下(17%の暴落)になったとき
  3. 5000万円以下にならないようにポートフォリオを組むには、既存の契約でFXの率を減らして、アメリカドル建て海外銀行の定期預金に変えるなどのリバランスが必須。

step
4
契約の見直しとリバランスのアクション

 

ここからはポートフォリオの例をたくさん挙げていきますので、お好みに近しい例を見つけてみてください。

10通りのポートフォリオの例

それではここからロー・ミドル・ハイにわけてリスクリターンごとのポートフォリオを10通りご紹介します。

ローリスクローリターンな早期退職なポートフォリオ

はじめにローリスクローリターン運用の早期退職者用ポートフォリオ例をご紹介します。

トータルリターンは2%以下を想定しています。

リスクをかなり抑えたローリスクローリターンポートフォリオ。

現金の保有率が3割となっており、円安インフレが進行すると資産価値の目減りが起こりやすものの、国内債券を同じ率保有することでそのリスクを低減。

ボラティリティが低く安定資産の国内債券の率が8割、リスクリターンが中程度の国内株式や国内リートをそれぞれ1割にしたポートフォリオ。

円安インフレで現預金の資産価値の目減りをリスク回避したい場合に。

現預金が4割でありながら、不動産の実物資産を4割にすることでインフレリスクを低減

他積極的な投資としてミドルリスクミドルリターンの海外株式や、国内リートを1割ずつ保有。

現預金と国内債券が3割づつ、保険と定期預金が15%づつ、積極投資として1割程度の投資信託で組んだポートフォリオ。

極端に増える内容ではないが、かつて多くの日本人が行っていた例の一つで、やや古い。

ミドルリスクミドルリターンな早期退職のポートフォリオ

お次はミドルリスクミドルリターン運用の早期退職者用ポートフォリオの例です。

トータルリターンは3-4%弱を想定しています。

現預金を持たず、債権によって円安やインフレによる現預金の資産価値の目減りを回避しつつ、投資信託や株式の割合を上げたポートフォリオ。

ミドルリスクの外国株式が3割で、安全資産の債券を合わせて4割にしてリスクを分散した例

積極投資の国内株式やリートを合わせて3割にしているのもいいポートフォリオの例。

資産を均等に分散したポートフォリオ

リバランスしたポートフォリオとして債権の割合を5割、株式の割合を3割、リートが2割などもおすすめ。

ハイリスクハイリターンな早期退職のポートフォリオ

次はハイリスクハイリターンなポートフォリオです。トータルリターンは5%超を想定しました。

積極的におすすめできるポートフォリオの例ではないものもありますが、もしこれに近しいようなポートフォリオにされている方は、リバランスのアドバイスを参考にされてください。

海外株式が4割のうえにFXと先物取引が合わせて1割という点が特徴的なポートフォリオ。

ハイリスクハイリターンながらインフレに強い実物資産の不動産3割・純金を2割にしているところがポイント。

例の中で最もハイリスク。その理由は新興国株式の割合。

これに近しい方は、新興国株式を25%以下にして債券や国内株式なども取り入れるリバランスの余地あり。

果してどのポートフォリオを早期退職後の資産形成に参考にしたいか決めきれていない方に向け、誰もが知る投資家のポートフォリオをご紹介します。自らのポートフォリオを決定する参考にしていただければと思います。

誰もが知る投資家のポートフェリオ例も参考に

誰もが知る投資家・プロ中のプロのポートフォリオはいったいどのようなものでしょうか?

ここでは以下著名な投資家のポートフォリオをご紹介します。

  • 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)
  • ハーバード大学基金
  • イエール大学基金

年金積立金管理運用独立行政法人のポートフォリオ

日本の早期退職者がより現実的に参考になるのが、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)のポートフォリオでしょう。

ココに注目

GPIFでは平均リターン4.33%、2023年までの収益額132.4兆円と報告されていますので、運用実績として理想的と言えるのではないかと思われます。

GPIFのポートフォリオについては以下が基本となっており、状況でいずれかの資産を減らしていずれかの資産を増やすと言ったリバランスが行われています。

  • 国内株式と債券:25%づつ
  • 海外株式と債券:25%づつ

厚労省

一見特徴がなくて目新しく注目すべき点が見つからないような王道のポートフォリオです。

もっと詳しく

しかしながらGPIFという「資産を失ってはならない防衛の視点」が最重視される投資家ゆえに、早期退職者にはお手本となるようなポートフォリオでもあります。

もちろん「数%も配分が違わないことが絶対」というわけでは断じてないのですが、ポートフォリオの原型としてGPIFは参考になるでしょう。

ハーバード大学基金のポートフォリオ

次のポートフォリオの例はハーバード大学基金です。

ハーバード大学基金のポートフォリオの場合

ハーバード大学基金の2021年版ポートフォリオ

ハーバード大学では毎年卒業生によって1000億円以上が寄付されており、この資金をハーバード大学の資産運用会社Harverd manegement companyが運用しています。当然ながら卒業生が寄付した資金は「返済不要なお金」です。

以下の3つの資産は株や債券などから比べると流動性に欠け即日換金できるような資産でもありませんが、このポートフォリオで利回り11%・資産残高が532億ドルと報告されます。

  • 未上場株式(プライベートエクイティ):34%
  • ヘッジファンド:33%
  • 不動産:5%

公開株式や債券で11%の利回りを延々と出し続けるのは逆に難しいです。ハーバード大学基金のポートフォリオは「だから凄い」となります。

これを個人投資家がそのまま真似すると「正気の沙汰ではない」となりますのでご注意ください。

ハーバード大学のポートフォリオは明らかに「自身をよくわかって投資運用している」のがわかります。

30年超時間がある早期退職者にとって、ハーバード大学のポートフォリオが”とてもふさわしい・おすすめ”などとは言えないのですが、その点は参考なるでしょう。

イエール大学基金のポートフォリオ

次はイエール大学基金のポートフォリオです。

ココがポイント

イエール大学基金はここ20年間で基金規模が7倍に倍増・トータルリターン平均14.2%、資産残高194億ドルになっており、投資家の注目を集めてしまったらしいのです。

イエール大学基金の2022年版ポートフォリオ

イエール大学基金の2020年版ポートフォリオ

20年間で基金規模が7倍になったイエール大学は、いったいどのように投資戦略を変更・リバランスを行ったのでしょうか?

イエール大学基金の主な投資戦略の変遷
1991年 米国株式と債券が53% ※流動性はあるがリターンのチャンスが少なかった
2020年 ベンチャーキャピタル(未上場株式)や不動産が全体の3割
※長期的に、より収益性を狙う非流動性資産
不動産と天然資源が全体の14%
※インフレリスクの抑制

※現在の株式・債券・現金の割合は2割程度

ココに注目

ハーバード大学もイエール大学も未上場株式・ヘッジファンド・不動産の割合が全体の半数を超えているのが特徴で、インフレリスクや自身の勝手知ったる上でそれらが選択されているようです。

ココがポイント

私たちがこの2つの大学基金から学ぶ点は、インフレリスクのヘッジとして不動産を活用する点・自分自身のライフスタイルを踏まえた上でポートフォリオを組むといった点になるでしょう。

 

 

 

 

 

  • この記事を書いた人

LCFPO

公認会計士事務所での決算業務実務経験を経て、FPとして受けた相談件数は18000名以上。契約の継続率・販売力・商品の品質に関するインターナショナルクオリティアワードを受賞。ほか受賞歴や業界内の取材受注多。現職は資産形成・不動産投資案件やインフラ契約のご相談を承るオフィスの代表FP、事業家。くわしくは「about」よりどうぞ。