早期退職のマネープランについて、具体的にどんなポイントを押さえたらいいのかをお伝えしています。
早期退職前に行っておくこと、退職後に行うこと、早期退職の善し悪しを決定することなど、ファイナンシャルプランナーとして有料級のお話をしていますので参考にされてください。
早期退職時のライフプラン
2023年の厚生労働省の発表によると、「勤労年数が20年超かつ45歳以上で退職をした退職者」に占める早期退職の割合は37.4%だったそうです。
この早期退職者が占める割合は年々増えており、主な背景としては「早期退職を募集する企業が増加傾向」にあるようです。
早期退職前に行うこと
早期退職に向けて行うのは以下のような流れになります。
①お金の流れや資産状況を把握
早期退職に向けて以下の項目で「収入と支出」「負債と資産」をリストアップします。
面倒でも一つ一つリストアップすることで早期退職後のライフプラン予測が正確になりますので、時間をかけてゆっくり行ってみてください。
☟【収入と支出の部】
☟【負債と資産の部】
本人と配偶者の収入
- 給与・継続雇用などの収入
- 公的年金・企業年金
負債にカウントするもの
- 住宅ローン
- 自動車のローンなど
支出にカウントするもの
- 生活に関わる支出すべて
教育資金・食費・医療費・税金・小遣い・衣服・交際費・家のリフォーム資金など
※面倒でもすべてリストアップ
資産にカウントするもの
- 現預金
- 株・投信等投資系の資産
- 終身や年金等貯蓄系保険
- 財形貯蓄など
もっと詳しく
保険会社の証券やオンラインで資産状況をチェックしたり、クレジットカードの明細で正確な金額をチェックしたり、ファクトベースで行ってみてください。1個1個確実にすることで早期退職のマネープランが正確になって行きます。
ココに注目
ポイント
お金をかけることは人生の中で大切にしていることの表れです。早期退職で生まれて来るゆとりのある時間で趣味・サークル・習い事など何に時間をかけてみたいかを考えるのも大切です。time is moneyと言ったりしますが時間をかけるものはお金をかけることでもあるのです。
それではこのリストアップした項目をもとにシミュレーションを行ってみましょう。
②早期退職後のマネープランシミュレーションを入力
それでは金融庁などが提供するオンラインシミュレーションを使って実際に行ってみましょう。
STEP1【収入・支出・負債・一括払い資産の入力】
☟一括払いの資産を複数保有している場合は以下で都度試算
STEP2【積立系資産の入力】
STEP3 【最後のフェーズ】
【事例】早期退職後の夫婦のマネープランシミュレーションをしてみた
早期退職後のマネープランについて「57歳の女性が早期退職を予定されているシミュレーション」を世帯で行ってみました。
妻57歳 ※早期退職を検討
- 年収:手取り600万円
- 現預金:2500万円
- 退職金予定額:1500万程度
- 年金受給額:年額120万程度を予定
- 投資:米国の投資信託の積立月額10万円(年利5%程度)、外貨建ての貯蓄型年金保険一括払い500万円(年利2~4%程度)
- 医療保険月額5500円
夫65歳 年金受給
- 年収:年金受給額年160万円
- 現預金:4000万円
- 投資:投資信託の積立月額2万円(年利1.5%程度)、外貨建ての終身保険一括払い1000万円(年利2~4%想定)
- 住宅ローン:残債1000万円・金利1.35%・月額の支払いは73,000円
- 医療保険:がん保険月額6500円
生活費
- 生活費は月およそ20万円(食費6万円・夫婦あわせてのお小遣い月額5万円・通信費12,000円・水道光熱費15000円他車両費や交際費など)
- あまり無駄使いはしないが、二人とも温泉などに出かける旅行が趣味
STEP1【収入・支出・負債・一括払い資産の入力】
現預金のデータは入力、積立や一括払いの資産については除外で入力
一括払いの資産について個々入力
妻保有の外貨建ての貯蓄型年金保険一括払い500万円(年利2~4%程度を想定)
夫保有の外貨建ての終身保険一括払い1000万円(年利2~4%程度を想定)
STEP2【積立系資産の入力】
異なる積立商品を複数保有しているならば、以下のように1回ごとにシミュレーション。
STEP3 【最後のフェーズ】
上のシミュレーションから、この57歳の女性は早期退職をしても経済的に懸念点はありません。
資産形成や支出面で敢えて申し上げるならば以下のような見直しができるでしょう。
収入や資産
- 現預金の割合が著しく多くインフレと円安局面では無駄に資産価値の目減りを招くため、安定運用の外貨資産を保有する率を増やす
- 妻の退職金1500万円と現預金のうちのいくらかを一括払い資産として検討する
ココがポイント
資産運用については自己判断でおかしな投資や運用を始めてしまう前に、世界経済と日本経済の状況も含めてプランニングしてもらえるようなプロに客観的かつ公平なアドバイスを受けてみてください。
支出
- 夫婦ともに契約している医療系の保険は解約しても構わない(年間12万円削減)
- 自己所有のマンションのリフォーム費用や要介護になった場合の入居費について余裕を持ったマネープランを
夫婦それぞれ契約している医療保険を解約しても構わないのは、飽くまで保険は保険・万一の病気は十分な預貯金や高額医療費の払い戻しでカバーできるためです。
早期退職後に行うこと
①早期退職に向けた資金の準備:円通貨資産の割合を減らす「視座を身に着ける」
それでは早期退職に向けた資金の準備を行っていきましょう。
日本人の資産の大部分は以下のようになっています。
- 円通貨:日本人の総資産の97%
- 現預金:日本人の総資産の約半分
注意ポイント
早期退職のシミュレーション例として挙げた夫婦のように「資産のうち現預金の割合が著しく高すぎる」のは、今後の日本で不利にしか働きません。
インフレや円安の圧力が強まっていく中で、「現預金を保有すればするほど資産価値が目減りします。」
なかなかイメージできないかもしれませんが、以下で解説していますので参考にされてください。
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インフレと円安圧力が高まっていく中で現預金が不利な理由
これまでお受けしたお客様からのご質問やご不安などをQ&A形式でお伝えしています。 日本人ならば誰もが抱える不安や疑問でもありますのでご参考ください。 Contents1 お客様の不安や疑問を時間を重ね ...
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資源がない・自給率が低い輸入大国日本にいれば値上がった価格で購入するしかなく、円安が進んだ状態で購入するしかありません。ガソリンがそのいい例で、同じ金額でも少ない量しか購入できなくなりました。この先の日本で延々と進行していくわけですからコスト負担が大きいのです。
まずは「円通貨を現預金で保有しておくことがいかに今後リスクが高まっていくか」について知識を増やしておくのがおすすめ。以下でも詳細を解説していますので参考にされてみてください。
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アメリカドルで海外銀行の口座開設する重要性が増している理由
Contents1 今アメリカドルで海外銀行の口座開設する重要性が増している理由1.1 日本で生きていくうえで、環境や制度面で抗うにも限界がある1.2 資産を防衛するために知っておきたい ...
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②日本の今後の税制度の流れについて把握しておく
日本では2024年から新NISAという少額投資の非課税制度が大々的にスタートしました。
一方で2025年から金融所得課税が強化されることが決まっており、さらに今後この金融所得課税がいっそう厳格化されていく道筋になっています。
残念ながら、これが真実であることをしっかり認識して今後退職金の資産運用を見据えていくしかないでしょう。国による国民の資産を把握したり捕捉したりする意向を看過していたら資産は消えていくだけなのが現実です。
この意味で日本政府の管理下からお金だけフライトさせる考え方を持つのもこれからますます重要になってくるでしょう。
③実際の退職金や資産の運用
早期退職を予定されているならば、具体的に退職金でどのような資産運用をすればいいか検討していきます。
リスクが高い商品一例
- ビットコイン・仮想通貨(投資というより投機です)
- FXで高すぎるレバレッジ取引
- 個別株の信用取引
注意・おすすめできない退職金の資産運用
- 個別銘柄の株式へ退職金をすべて投資することはおすすめできません
- 私募債の意味合いが強い情報がオープンにされていないクローズドな金融商品
個別銘柄の株式で株主優待制度などのメリットを解説するサイトもありますし、人それぞれの考え方ですので絶対に間違っているとは言えないのですが、一企業だけに退職金を全振りするのはリスクがあります。個別銘柄の株を保有したいならば、退職金のうちの何割かに限定しておきましょう。
以下のの銘柄に退職金を分散投資されてみてはいかがでしょうか。「退職金全てを一商品だけに預けない」ということを徹底してみてください。
退職金を活用した資産形おすすめ
- 海外金融機関の確定金利商品
- インディックスファンド(王道銘柄でOK・NISAの成長投資を活用するなど)
- 債券
早期退職の善し悪しは「楽観しない・悲観し過ぎないマネープラン」にあり
早期退職について考えていると、果たして早期退職がデメリットに働くのか、メリットが多いのか、判断がつかないように思う場合もあるのではないでしょうか。
以下で挙げているポイントを押さえて楽観し過ぎない悲観し過ぎないマネープランの支店を持つようにしてみましょう。
早期退職するメリットとデメリットを知っておく
すでに把握されておられると思うのですが、早期退職をすると具体的にどんなメリットがありそうか、逆にどんなデメリットがあるのかをおさらいしておきます。
企業の3割程度が早期優遇制度を設けていると言われていますので、総務などに確認してみるといいのではないでしょうか。
早期退職のデメリット
- 定期的な収入がなくなり、人によっては経済的な不安がデメリットにもなるケースがある。
- 在職中の社内での人間関係や人とのつながりを重視していたのであれば、同じように関われなくなる
解決策はこれだけ
一つ目の経済的な不安については、ライフプランをしっかりして今後の見通しを明らかにしておくこと以外に解決策はないでしょう。この意味で公平で客観的な専門家のアドバイスを受けてみてください。
退職金取り崩しの4%ルール
早期退職後は「現役時代の資産を取り崩しながら生活する」のが基本になります。しかしながらどのくらいのペースで取り崩ししていけばいいのか全く見当もつかない人も多いでしょう。
アメリカの研究により、退職後に資産を減らさずに生活していく4%ルールが報告されていますので参考にされてみてください。
1年に取り崩していい退職後の金額=”退職時の資産”×4%
退職後2年目も退職時の資産に4%を掛けた金額を一年に取り崩していい退職後の金額としてみてくださいね。
ねんきん定期便の確認
公的年金に関しては、将来的にどうなるのかほぼわからないというのが正直なところです。
2024年現在で40代の世代にとっては「公的年金はあってもごくわずかしかない・受給年齢もいくつになるかわからない」と見込んでいる人がほとんど。
公的年金については、送られてくる年金定期便をもとに「あってもごくわずか」の見込みで視野にいれておくのがベターな気がします。
退職後にかかるお金を確認しておく
早期退職後には以下のお金が必要になります。
- 国民健康保険や国民年金への加入
- 住民税の支払い
これまで会社の給与からの天引きで支払いが行われていたものについても、退職後は自分で支払うというのが基本になります。