富裕層の間に知られている”金融界隈で言うCRS”という言葉は、実情はあまり知られていません。
ここではCRSとはどういった制度なのか? CRS非加盟国の銀行口座を持つことがこの先どんなメリットがありそうなのか?を詳しくお伝えしています。
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Contents
’金融機関のCRS’って何?
まずはその実態があまり知られていない”金融機関のCRS”について解説します。
CRSとは
CRS(共通報告基準:Common Reporting Standardの略)は「海外にある非居住者の金融機関口座情報」がその人が住む国の税務当局に自動開示される仕組みを言います。
CRSの対象となるのは銀行預金・証券会社や保険会社を通して行った契約で、口座の名義や届け出とされている住所生年月日・金額・利子や配当金が年いくらだったか・納税者識別番号(マイナンバー)です。
日本の国税庁は個人法人口座いずれも100万円以上の入金があった場合を特に監視しています。しかしながら、特に100万超の場合を注視しているだけのこと、すべての海外の金融機関の口座がCRSの対象となっているようです。
CRSが創設された背景には2008年のスイス銀行大手のUSB行員による脱税ほう助事件※がありました。経済協力開発機構(OECD)により海外の金融機関を通して得た利子所得に対する逃税を防止、加盟国同士で効率的に情報交換を行うために創設されています。
資産の捕捉がCRSの目的であり、その先に逃税を許さないのが最大の狙いです。
補足された情報は以下のとおり。
令和4年のデータ | 個人口座 | 法人口座 |
件数 | 250万件 | 3万件 |
残高 | 10.9超円 | 5.5兆円 |
※個人口座は250万件で相当数あり、1人の人が複数口座を持っている可能性もあります。
2025年のCRS加盟国一覧
令和7年の国税庁の報告によるCRS加盟国数は108か国、CRS加盟国一覧は以下のとおり。
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出典:国税庁
2024年にあらたにジョージアとアルメニアが加入しています。※2023年のCRS加盟国数は106か国
かつて海外銀行口座としてモナコや香港は爆発的な人気でした。
モナコについては「富裕層が保有できるプライベートバンク」としていまだに羨望のまなざしで見られていますが、プライベートバンクであろうとモナコはCRSの加盟国となってしまった限り特別なプライバシー性があるわけではありません。
2025年現在のCRS非加盟国一覧
2025年現在のCRS非加盟国一覧は以下のとおりです。
CRS「非」加盟国一覧
アフリカ | エジプト・コンゴ・スーダン・チャド・ニジェール・アルジェリア・リビア・チュニジア・ギニア・マリ・エチオピア・ソマリア・アンゴラ公国・ザンビア・ガボン・モザンピーク・ジンバブエ・ナミビア・ボツワナ |
アジア | フィリピン・ベトナム・カンボジア・ラオス・ミャンマー・ブータン・ネパール・スリランカ |
中央アジア+ほか | チベット・キルギス・タジキスタン・ウズベキスタン・トルクメ二スタン・モンゴル |
中東 | イラン・イラク・シリア・イエメン |
ヨーロッパ | ― |
南米 | ベネズエラ・ガテマラ・ニカラグア・ボリビア・パラグアイ |
下の赤色で示した国がCRS「非」加盟国です。
■:CRS「非」加盟国 ■:CRS加盟国
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アジア諸国におけるCRS非加盟国※弊社作成
近日中CRS加盟予定国
ルワンダ
CRSには順次加盟する国が後を絶たないため、インターネット上の古い情報に気を付ける必要があるでしょう。
CRS非加盟国に着目した資産形成もある
CRS非加盟国で銀行口座を持つメリット
CRS非加盟国に銀行口座を持つメリットを文言通りお伝えすると以下のとおりです。
「海外にある非居住者の金融機関口座情報」が日本の国税庁に自動開示されることはなく、CRS非加盟国で保有している金融機関についての申告に原則強制力はありません。※こうした目的を持つ人でも納税はしていますので誤解されませんようご注意ください。
昔は海外の高金利が魅力で海外銀行の口座開設が多かったわけですが、現在はこれだけが理由で海外に銀行口座を開設する人が後を絶たないわけではありません。
「銀行口座を紐づけすればマイナポイントを増額する」といったマイナカードの一大キャンペーンについては、国民の資産の捕捉の目的がかなり不気味がられました。
2024年にはじまった新NISA制度については投資で得られる利益の非課税制度として大々的に告知されました。しかしながら「新NISA制度の枠組みを超えて行う場合の投資」については、その翌年の2025年から金融所得税課税が強化されています。
このNISA制度については金融所得課税を強化するためのステップであり、国民資産を把握するための制度に過ぎないなどとも指摘されています。
悪くない制度ですが、つまるところ「日本政府の本当の目的はここだろうな」と納得してしまうところもあるわけです。
「日本政府に資産のプライバシー性を保ちたい」という重要性が日に日に増しているため、CRS非加盟国の金融機関にお金だけを移しておきたいと思う人が増えているのです。
資産のプライバシー性を保てる有力CRS非加盟国はどこなのか?
あの大国であり覇権国であるアメリカ、そして経済成長著しいフィリピンについてもCRSに加盟していません。
この2国のCRS非加盟国を有力候補として解説しますので参考にされてください。
CRS非加盟国アメリカ・なぜあの大国が?
アメリカについては「全世界の資産を米国に」という意図があり、自ら言い出してCRSの制度を構築しましたが、自身は加盟していません。
さらにアメリカは独自にFATCA(外国口座税務コンプライアンス法)という制度を創設しました。アメリカ国籍を持つ人が海外で口座開設をした場合アメリカ政府に報告と納税義務がある、というアメリカ独自の制度です。他国はこのFATCAの制度に従ってアメリカ国籍の人の口座情報をアメリカに報告する決まりになっています。
FATCAの制度があるからアメリカはCRSに加盟していないという見方もありますがそれは表向きの発言に過ぎません。それとCRS非加盟国であることと合わせるとアメリカの目的が最大化されることを忘れてはならないのです。
CRS非加盟国の立場とFATCAという制度を合わせて考えてみると、アメリカがいかにこの「自国にお金を集める意図が強固か」ということが推察できます。
しかしながらアメリカに住所を持たない日本人が銀行口座を開設することは現在至難の業となってしまいました。決して旅行のついでにふらっと窓口を訪れて口座開設できるわけではなくなっています。
CRS非加盟国フィリピン・経済成長を背景にした高金利
フィリピンについては、以下のコンテンツのとおり出稼ぎ労働者が多いというお国事情(フィリピンにできるだけ資産を維持しておきたい)からCRSに加盟しません。
経済成長著しいASEAN地域の中から主要6ケ国をピックアップ、6項目で比較すると、フィリピンという国がアドバンテージとポテンシャルを秘めた国であることがわかります。
2024年のGDPに関しては、シンガポールとタイを除いた国すべてが5%を上回っており、1位は6.5%のフィリピンでした。
経済の安定性で言えばシンガポールがダントツです。しかしながらシンガポールの平均年齢は38歳となかなかな高齢化社会に突入している国で、国土も大変小さいために人口も多くありません。
かたやフィリピンの平均年齢は24歳と最も若く、人口は日本並みにある、人口ピラミッドがきれいな三角形をなしているといった条件から、この先50年の経済成長が見込まれています。
国民の8割超が英語を話す国であり、なんとか日本人でもカタコトが通じるでしょう。
不動産投資といった視点でも、フィリピンはシンガポールのように平米単価が上がり切っていません。このため物件を数年寝かせるなどしてキャピタルゲインが大きく取れやすいフェーズとなっています。
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そして資産形成の基本は分散。米ドルや日本円といった先進国通貨だけでなくASEAN地域の通貨も込みで考えることで、資産の分散効果もさらに幅が広がります。
フィリピンというアドバンテージがある国通貨を選択することで、その高金利のメリットを享受でき、さらにCRS非加盟国といったプライバシー性のメリットも享受できるでしょう。
CRS非加盟国は東南アジアの他、アフリカ・南アジア・中央アジア・中東・南米の国でした。南アジアは金利が高いですが、安全とも言えません。情勢や治安や経済成長から消去法で考えられる有力候補はASEAN。ここからさらに、CRS非加盟国を絞ると、「フィリピン・ベトナム・カンボジア・ラオス」の中でフィリピンが選ばれやすくなっているのです。
以下海外銀行の高金利ランキングも参考にされてみてください。
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CRS非加盟国の金融機関口座開設お申込み
弊社では上述しましたCRS非加盟国のフィリピンの金融機関口座開設について以下2パターンをご案内しております。
いずれもオンライン手続きできる金融機関で、日本の運転免許証とパスポートがあれば口座開設できます
最大金利12.1%・フィリピン経済を支える最大大手企業の定期商品インスパイア社のマイクロインベストメント
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最高12.1%の金利インスパイアのマイクロインベスティメント・ほかフィリピンで現金所持や通貨交換から解放される方法
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こちらの商品につきましては、お申込み費用は不要です。
- 日本の免許証とパスポートの2つのIDで口座開設可
- オンライン手続き可
- クレジットカード・ペイパル・GMOあおぞらネット銀行で送金
創業65年のフィリピンの老舗証券会社ABキャピタル・世界中の銘柄を集めてくれるプライベートウエルス
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こちらの口座お申込みについては、お申込み費用は3万フィリピンペソ(およそ8万円)となっています。
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- 2回まで通訳サポートあり(それ以上は1銘柄につき15分有料で相談可)
- アメリカとフィリピンの国債や社債で4~5%の年利
- ストマスというLINEの有料グループ内で不定期のオンラインセミナーを受講できる
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わからないことがあれば一つ一つお伝えします。以下よりお問い合わせください。
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CRSにまつわるECT
CRSにまつわるFAQ
CRSを回避する方法はある?
- CRS非加盟国の金融機関にお金を置く
- 銀行預金に限らず、証券会社や有価証券なども資産の候補にする
海外の金融機関の口座を解約した場合、解約した年にCRSの対象となるか?
口座を解約した年もCRSの情報交換の対象です。
CRSとFATCAの違いは何?
FATCA(外国口座税務コンプライアンス法)はアメリカ国籍を持つ人が海外で口座開設をした場合、アメリカ政府に報告義務がある、というアメリカ独自の制度です。他国はこのFATCAの制度に従ってアメリカ国籍の人の口座情報をアメリカに報告する決まりになっています。
CRSは108カ国加盟している制度で、上述してきましたとおりです。
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FATCAとは? CRSとの違いも解説
Contents1 FATCAって何? わかりやすく知りたい1.1 FATCAとCRSの違い1.2 事例でわかりやすく図解 FATCAって何? わかりやすく知りたい アメリカの税制度であるFATCA( ...
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CRSはいつから開始された?
日本での開始は平成29年の1月1日からです。
海外銀行から送金した記録は調査対象になる?
ならないと言われています。いつ・どこに・いくら送金したのかはCRSの情報交換の対象ではありません。
CRSと相互連携して行われる国内の制度
CRSの創設の目的は「海外の金融機関を通して得た利子所得に対する逃税を防止、加盟国同士で効率的に情報交換を行うため」です。
この目的を達成するために、日本では以下3つの枠組みとも相互に連携されています。
- 国外財産調書:海外に5000万円超の資産
- 財産債務調書:所得が2000万円超で海外も含めて3億円超の資産がある
- 国外転出時課税:日本在住者が国外に転出・1億円超の資産を保有
国外財産調書
海外に5000万円超の不動産や金融資産を保有している日本在住の日本人は、資産の種類・数や金額・などを記載した国外財産調書を、国外財産調書を国税庁に提出する必要があります。※現在はインターネット上で行うe Taxにおいても申告可
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出典:国税庁
財産債務調書
以下のいずれかに該当する人が資産の種類・数や金額・債務金額などを記載して国税庁に提出する必要があります。※etaxで提出可
- 所得金額が2000万円超でかつ3億円超の資産、または1億円を超える国外転出特定財産(有価証券・未決済信用取引・デリバティブ取引)を保有する人
- 10億円以上の資産を保有する人(1に該当する人は除外)
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出典:国税庁
※上述の国外財産調書と似通っていますが、財産債務調書では債務の欄を記載するようになっています。
国外転出時課税(出国税)
日本在住者が国外に転出・1億円超の資産を保有しているとき、含み益について申告や納税を行う必要があります。
あるいは1億円超の資産を保有している人から、海外に居住する親族に相続や遺贈によって資産が転移した場合も相続および遺贈の対象となる資産の含み益について申告や納税を行わなければなりません。
この国外転出課税については「資産の含み益」に対して課税される点に注目です。利益確定していなくても納税が必要となります。