
法人がイギリス不動産による減価償却で節税を最大化させる最大の鍵は、RICS鑑定による客観的な証拠構築にあります。営業損失と売却益を通算する戦略こそが実務の正解です。
ここでは元公認会計士事務所勤務・FPの視点から、イギリス不動産を活用した減価償却の本質を提示しています。
Contents
高額納税企業が選ぶべき「法人保有」によるイギリス不動産減価償却の最大化
イギリスの不動産は高額です。必然的にこの物件は人を選び、数千万~数億円単位で利益が出ている法人が対象となるケースが9割超です。
そうした企業には節税という切実な課題がありますが、現代の節税の手法はかつてよりもかなり限られており、唯一の王道策が不動産の減価償却費の計上で、中でもイギリス不動産によるそれは有益です。
まずはイギリス不動産の減価償却費を活用しての節税効果を最大化する考え方をお伝えします。
個人保有から法人保有へ:戦略的シフトの損益分岐点
2021年の法改正により「海外の中古不動産による減価償却による損益通算」が個人所得で封じられましたが、法人が同様な手法で節税するのは引き続き可能です。
イギリス不動産の中古不動産の高い建物比率を活かし、法人の本業の利益を圧縮、いざ売却のフェーズを迎えたときの「法人税率との差額を純資産として残せます。この税率の差で利益を確保する取引こそが、イギリス不動産の戦略の本質。
建物比率についてですが、不動産投資における購入価額は土地と建物に分かれます。土地はどれだけ時間が経っても価値が減らない償却できない資産として扱われます。一方で建物については日英で以下のような違いがあります。
- 日本国内: 木造戸建ての場合は土地代が高く建物比率が「2:8」や「3:7」程度になることが珍しくない
- イギリス: ロンドン都市部の区分所有(リースホールド)や郊外の築古物件は、建物比率が「70%〜80%」程度
建物比率のウエイトは減価償却できる額の大きさに直結、法人の損益計算書に計上できます。これがもたらす実利は以下の通りです。
帳簿の赤字と手元のキャッシュは異なる
減価償却はキャッシュアウトを伴わないコストです。帳簿では利益を圧縮して納税額を減らし、銀行口座などで現金が蓄積していく流れを構築します。
利益の圧縮シミュレーション例
- 法人の営業利益:5,000万円
- マンチェスターの築古建物価格(償却期間が短期):8,000万円
- 簡便法による一年の減価償却費額:1500万円
- 法人税の支払い(約30%〜34%)の圧縮効果:1,700万円だったはずの納税額→1,190万円
個人資産ではなく、法人の税引前利益を不動産という資産に変え、減価償却で税を調整しながら内部留保の積み上げを目指します。
法人の資産にイギリス不動産を取り込み、減価償却費で少なくなった納税額をキャッシュフローとして残せば、その金額でさまざまな事業戦略が立てられます。この視点を持てた瞬間が分岐点です。
法人税率と所得税率の比較から導き出す、最適解としてのイギリス
家賃でどの程度の利回りで収益を立てるという話ではなく、「本業の利益を、税金として捨てずに法人内にストックする装置としてイギリス不動産を使う」、これこそが高額納税企業の経営者が求めている節税の構造です。
利益が5000万出ている法人の経営者が個人で不動産を所有すれば、個人所得による損益通算ができないため所得税は1円も減らせません。最高税率に近い属性が個人所得に家賃収入を追加されたならば、その利益には55%の税率がかかり、手元には45%の家賃収入しか残りません。持てる者に対し残酷なそぎ落とし措置です。
経営者の「法人」がイギリスの築古物件(建物8,000万円)を保有すれば、利益5000万円から減価償却費1500万円を差し引いた額に対し34%の法人税が課されるにとどまります。
結果、国に持っていかれるはずの「個人と法人の税率差(約20%)」という現金を、まるごと法人の内部留保(純資産)として確定できます。
イギリス不動産を売却するようなフェーズに来た場合、売却益をたとえば他の事業の赤字や役員の勇退金と相殺できます。法人の減価償却費を活用し売却してもなお出口でも守り抜ける、最終的には税率がもっとも低い率で個人に還元できるのです。
※節税シミュレーションの例にあったような企業経営者は、個人資産を保有すれば世界でも最も重いと言われる相続税の強制徴収に遭います。
新興国のような5年経過すればどうなっているかわからないという不安定な不動産市場でこの試みを行うのはあまりに危険ですが、イギリスの場合は下の記事のように安定した市場が歴史の上に積み上がっていることから、5‐15年先を見込んだ法人の節税対策や役員の退職金の準備の計画性の精度が他とは比べ物にならないほど実現しやすいのです。
なお、イギリスの法人税は実質以下のような累進課税制度になっています。
| 利益 ※通算後 | トータルリターンへの影響 | |
| 小規模利益税率19% | 5万ポンド以下 | 高い効率が狙える |
| 標準税率25% | 25万ポンド超 | 大型案件はこの税率を前提に計画を要する |
将来を見据えた「残存価値」の設計
日本の不動産は完成した瞬間から建物価値がゼロに向かうという考え方をします。イギリスの場合は土地が有限であり、かつ建物の維持再生が法・制度・特権階級によって強固に守られ価値が維持される仕組みをしています。
このような仕組みを利用し、減価償却で帳簿上の価値は下げつつ、現地の市場価値を維持・向上させることができるのです。このような不動産特有の「残存価値」を左右する3つの要素は以下のとおりです。
借地権延長で残存価格調整
イギリスのフラット(マンション)のほとんどが残存期間80年未満になると価値が急落する性質をしていることから、残存期間が短くリーズナブルな物件を入手、借地権延長(Lease Extension)を使って期間を延ばすことで、残存価値をコントロール・押し上げることが可能になっています。
省エネ物件化による残存価格維持
昨今のイギリスでは、賃貸物件について省エネ基準(EPC Rating)が高めに設定されており、断熱素材を活用したリノベーションや暖房機器システムを導入するなどすれば、売却のフェーズになって評価額が維持できるようになっています。この基準から外れた物件は借りてもらえない売れもしない物件として扱われるリスクがあります。
インフレの防衛策としての残存価格
長い歴史の中でイギリス不動産はポンド安から逃げるための資産防衛策として所有され、1,900年から6.8万倍も高騰してきました。通貨の下落に対してイギリス不動産は耐性が強固という特性があります。
【例】£250,000の物件を25%の自己資金(£62,500)で購入、20年後に物件価格が2倍になった場合、借入額は変わっていないため(インフレでローンの額も薄まる)、自己資金に対する「残存価値」の増幅率は単なる貯蓄とは比較にならないレベルに達する。
このとおり、イギリスは法制度や特権階級による既存所有者への保護が強固なため慢性的に住宅不足であることは事実です。しかし古くなっても「居住ニーズ」という残存価値が消えることは極めて稀、という日本とはかなり違った不動産事情をしています。
不動産投資は「家賃を受け取る・利回りがいくらなのか」という発想だけですと、法人にとって使える戦術が極めて限定的です。上のように負債を利用して将来の純資産額(Equity)を最大化するという発想を持っていただくと、法人でイギリス不動産を保有する意味やキャッシュフローがかなり変わってくるものと思われます。
売却益との通算で考える実質的トータルリターン
イギリス不動産を法人で所有する最大のメリットの一つに損失と利益を通算できる点があります。通算の融通性は法人が実質リターンで勝を狙える最大の理由と言われます。
- 無期限繰り越し:リノベーション費用・ローンの利息・管理費などのコストが家賃収入よりも上回って出た赤字
- 課税額の圧縮:数十年後に物件の売却益が出たとしても、過去に計上された赤字があればその分で売却益を圧縮できる
※個人所有の場合は、上のように「不動産所得において赤字と売却益の相殺」はできません。
日本本社への還流
イギリス法人を設立・そこで得られた利益を日本の親会社へ還流させるとき、取り扱いは以下のようになっています。
- 源泉徴収税:ゼロ%
- 物件売却益:イギリス法人税を支払って手元に残った額
- 日本への送金金額:追加で課税なしで日本本社へ還流
- 日本側:外国税控除を利用し二重課税を回避(日英租税条約)
イギリス不動産の商取引が世界一の透明性で担保されている点は、日本企業の経営者にとっては事業の計画性に見通しが立てられるなど多くのメリットになります。
※新興国のような「出金可否が不透明で数年待ちが続く・不動産市場の不透明さで売却できるかもわからない」といった状況に陥った場合、日本の投資家が外からできることはほとんどありません。この不透明は日本の投資家にとって死地を意味します。
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現代イギリス不動産法が担保する「建物評価」の透明性
RICS鑑定士による建物比率の算定プロセス
イギリス不動産においてRICS(Royal Institution of Chartered Surveyors英国公認測量士協会)は、不動産の価値を決める裁判官のような存在でイギリス王室から認められる世界で最も権威ある不動産団体です。
日本でいう固定資産税がイギリスには存在しません。これを日本の税申告制度の中ででイギリスの土地と建物の公的按分比率を決定するには、客観的な根拠が必要です。
日本で不動産価格の査定を行うことは売却金額の見込み価格を出す一営業項目に過ぎませんが、RICSによる不動産鑑定は以下の強力な効力を発揮する意味で違いがあるのです。
RICSの不動産鑑定=法的効力発生
- レポート(Red Book)の法的責任:融資・裁判・相続・法人税務の根拠として強力な効力を持つ
- 強固な倫理規定: 顧客ごとに忖度が許されない。客観的データに基づいて適正価値の算出が求められる。
このような強力な法的根拠となるRICSの不動産鑑定は、日本の税務署にも否認されない証拠となります。建物を建て直したらいくらかかるかを測る再調達原価法(DRC法)は国際的会計基準に則り、イギリス王室認可団体のプロが算定した数字であるという事実があればすでに日本の税務署も認めざるを得ません。
この意味でRICS鑑定が税務調査に耐えうる保険となるのは申し上げるまでもございません。
120年続く登記制度が証明する、土地と建物の「分離不可能な価値」
日本の不動産では土地と建物の投機が別々にあり、それぞれを別にして売買することも可能です。
しかしイギリスにおいては登記制度Land Registryにおいて「土地と建物は不可分」です。19世紀末の近代登記制度設立以来、土地と建物は一体のものとして管理されます。つまり物件の購入はその土地に住む権利Leaseholdeを購入する事を意味し、土地と建物の不可分性の法的な縛りが、資産価値の安定性を生んでいるといって過言でありません。
イギリスで不動産を購入することは端的に借地権と解釈されがちですが、実質的な所有権として登記され、登記簿には「建物の使用期間が何年残っているか」が明確に記されています。
土地と建物を別々に評価する指標がないため、だからこそRICS鑑定士による再度立て直すにはどの程度の費用が必要なのかを示す再調達価格の決定が、建物価格を決める決定打になるのです。
この厳格な登記制度と土地建物不可分の制度は日本の税務署に有無を言わせないだけの力があり、他国の不動産取引ではなかなかお目にかかれません。だからこそイギリス不動産は日本法人の節税対策として強力なのです。
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「イギリス不動産に興味はあるけれど、日本の税務当局への説明が不安がある。」そんな法人経営者・財務担当者様へ。
弊社はイギリス滞在や公認会計事務所勤務経験があるFPが、物件の選定から減価償却のロジック構築、日本本社への利益還流まで、実務に即したアドバイスを提供します。
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