こちらではレイダリオの著書Changing world order変わりゆく世界秩序からインスパイアされた内容をお伝えする一方、私の独自の視点でアメリカについて、そして日本人である私たちの資産形成に役立つコンテンツをお伝えします。
繰り返されてきた国々の栄華衰退を紐解くと、現在行われているアメリカ大統領による関税発令がどのように世界に影響をもたらすのか、を推測するアングルが定まります。そしてこれによってご自身の資産形成の方向性も定まるかもしれません。

繰り返される大国の歴史
レイ・ダリオ(Ray Dalio)の『Changing World Order』(変わる世界秩序)では「歴史は同じように繰り返す」という視点から、大国の栄枯盛衰と一方で世界秩序の変化が分析されています。
覇権国の栄華衰退のサイクル
過去500年を遡ってみると同じパターンが繰り返し起こって覇権国が入れ替わっています。
オランダがピークから衰退することにはイギリスの勢いが増しており、イギリスがピークから衰退する頃にはアメリカの勢いが増しているといったように一国の衰退の傍ら、他国の急成長が起こっています。
現代は次なるサイクルへ向かう20~30年の移行期間にあるかもしれません。
技術革新と経済的発展が起こると、貿易がこの一つの通貨で行われ基軸通貨の国としての地位が確立されます。
基軸通貨としての特権を持ち、豊かさに慣れてしまうとそれを維持するために世界中の人からお金を借りるようになり、これが金融 バブルを引き起こします。
金融バブルによって膨れ上がった資産を持つ富裕層によって二極化が起こりますが、結果的には バブルが弾けることになり、通貨を大量に印刷しまくって富を再分配するための何らかの内紛や革命が起こり始めます。
内紛で勝者と敗者が生まれ、勝者は新たに世界秩序を生み出して新しいサイクルが始まるのです。栄華と衰退のサイクルはローマ帝国まで遡ることができて、ほとんどは 似通っています。
オランダという覇権国の興亡サイクル
オランダは1602年にオランダ東インド会社を設立します。これはほぼ国営と言って過言でない会社であり、世界初めてのグローバル企業でした。
そして自らの有価証券を売買してもらうためにアムステルダム証券取引所を設立しています。
これは有価証券という形で資金を調達する本格的な資本主義の始まりであり、同時にオランダという国の栄華衰退のサイクルの始まりでもありました。
この頃はアジアの香辛料がヨーロッパに大量に輸入されており、オランダはただ同然で香辛料を手に入れて高額な価格で売りさばき巨額の富を築き上げたのです。
アジアに香辛料を獲得しに行くためにオランダは造船業でも栄えました。オランダには造船で高度な技術者がたくさんいたんですね。このようにしてオランダはヨーロッパ全体の貿易を支配する立場になりました。
巨額の富を築き上げたオランダは、 一生懸命働かなくなりました。
今度はイギリスがオランダの設計者を雇い、安価なイギリスの労働力を使ってより良い船を建造するといった形で造船業が変遷していったのです。
イギリスはこれによって急成長し、方やオランダは衰退の一途を辿りました。
そして オランダは国と交易路を維持するためにイギリスをはじめとしたヨーロッパと莫大な 費用を要する 戦争をするわけです。
オランダでは軍事費によって膨れ上がった負債を返済することができず、オランダという国そのものの信用が失墜し、資金が枯渇したことによって 莫大な 紙幣の印刷をするに至ります。かつての大国だったオランダの存在はなきものとなりました。
イギリスという覇権国の興亡サイクル
こうして急成長したイギリスは産業革命が起こり、同時に植民地帝国を築き挙げて栄華を誇り、世界に大きな影響を与えました。イギリスでも東インド会社が設立されており、資本主義を発展させています。
そして1816年に金本位制が制定されることになるとポンドは強力な通貨となり、さらにはロンドンが金融の一大中心地となってポンドが世界の基軸通貨となって行くのです。(ここで言う金本位制度とは、ポンドを出してくれたら貴金属の金ゴールドと交換するという制度で、紙幣の価値を担保することを言います)。
そして2 度の世界大戦を経てイギリスは破壊的なダメージを負うことになります。軍事費が膨れ上がり巨額な負債を返済できなくなっていたのです。
債務残高の圧縮を余儀なくされ、そしてこの影響でイギリスポンドは価値が1/4になり、通貨の切り下げを行う傍らハイパーインフレが起こりました。
イギリスも戦争でかつての影響力が衰え、現在では国際的な舞台においてかつての存在感はなくなっています。
アメリカという覇権国の興亡サイクル
イギリスの衰退とともに急成長したのがアメリカであり、戦後の世界秩序の大きな役割を担ったのもアメリカにあります。
アメリカでも1971年金とドルの交換停止を行うに至ります。
このころの金本位制度は基軸通貨のドルのみが金と交換できるとされ、ほかの国の通貨はドルとレートを固定する固定相場制となっていました。
アメリカは金とドルをいつでも交換すると約束していましたが、ベトナム戦争による軍事費が膨れ上がり財政が悪化。金が国外へ流出し、交換ができなくなったのです。
アメリカは対策として紙のお札を大量に印刷しました ※対外的にはアナウンスされていませんが、実質アメリカはこの時デフォルト債務不履行に陥っていたと言います。
この経験からアメリカは歳入よりも多くの歳出をすることができるようになりました。収入よりも多い支出をアメリカ国債によって賄おうとする好ましいとは言えない習慣です。
好景気を起こすことなくただただお札を印刷するだけです。国の危機を回避するために中央銀行が紙幣を大量に印刷すれば紙幣の価値は下がります。
お札が供給過剰になってお金がじゃぶじゃぶ有り余って「お金あまり」が起こりました。こうしてアメリカは株を買い漁ったため株価は上昇します。
大量のドル紙幣を印刷して危機を回避するパターンはごく最近のアメリカでも行われています。
例えば2008年に起こったサブプライムローンによる債務危機、2020年に起こったコロナパンデミックによる経済危機の時にです。
コロナの時にアメリカは国債を発行しまくって国民1人あたり40万円の給付、そして失業手当を出して国民のお金を配った結果、ピーク時で8%のインフレを起こしています。
「将来的にアメリカに何らかの危機が起こって資金が枯渇すれば同じことが行われるでしょう。
アメリカの基軸通貨体制
つぎにアメリカの基軸通貨体制から現在を紐解いてみましょう。覇権と基軸通貨はどのように機能しあうのでしょうか。
基軸通貨とは世界に受け入れられている通貨のことです。
アメリカは石油の取引をするときにアメリカドルを使うように世界に呼びかけたことにより、これがアメリカドルを強力な基軸通貨として伸し上げることになりました。現在もなお貿易・金融取引の60%程度を占める最強の通貨です。
世界中の人は基軸通貨アメリカドルをアメリカ国債という形で蓄えます。基軸通貨を保有するアメリカ政府は破綻しない限り国債の元本を償還し、利払いもしてくれますから、世界最高峰の資産などと言われるからす。
基軸通貨としての地位を確立すると、経済的な豊かさだけでなく世界を牛耳るという支配的な権力を手にできます。
基軸通貨によって世界中の人からお金を集めた国は、軍事力を拡大できますから、力によって他国をねじ伏せることもできるからです。
国債によって世界中の人からお金を集めることができると、短期的にはお金があるように見えますし消費力も高めますが、長い目で見ると 国の財政状態を弱めることに繋がります。
世界で覇権を握った大国は全て この経路をたどっています。栄華を誇る果実の中には衰退の種が埋めこまれているのです。
アメリカは国内経済の衰退、軍備費に拡大によって衰退のフェーズに向かっています。
アメリカの二極化・資金の流出・経済の空洞化・経済のパイの縮小・内紛と革命
アメリカは基軸通貨という特権を持つことによって借金が膨らみ さらに多くの通貨を印刷、そして金融はバブルを迎えているのかもしれません 。
こうした流れでアメリカでは 富の格差が広がっています。
裕福なアメリカの家庭の親は資産を築き上げて子供に良い教育を施し、財産も渡せるので、 その子供はその資産を金融資産などに換えることによりさらに増やしていけます。
これが現在アメリカで起こっている二極化の一因です。
一般的に財政難になった政府は持っている人からお金を取ろうとしますので、富裕層は 富が奪われることを回避するためにより安全な場所に資産を移動させようとします。
資金の流出によって覇権国の歳入は減り、結果的に経済の空洞化を起こすのです。
このような混乱は国の 生産性をさらに弱め、 経済のパイは縮小。縮小してしまった資金をどのように分配するかについての内紛を引き起こします。
トランプ大統領が再選したのはこの混乱が起こったアメリカを コントロールをし 秩序を取り戻すことを誓約したからです。トランプ大統領は製造業労働者からの支持が熱いです。
混乱が起こって 富の再分配を行う過程では、何らかの形の革命や 内紛同然のことが起こります。多くの場合は 暴力的な革命が起こって 秩序が変わり始めます。
現在のアメリカはこの途上にいるのかもしれません。
トランプ第二政権の本質
いつしかアメリカは歳入を超える歳出を出すようになり、いわゆる赤字を補填するためにさらなる 借り入れを起こしてさらに紙幣を印刷しまくるサイクルを経験してきました。
トランプ大統領が関税の発令した根底にあるのはアメリカ政府の財政難にあります。
このまま数十年過ぎればアメリカは中国に覇権を奪われるかもしれないという危機感があまりに強すぎて、関税を発令することにより中国の国力を根こそぎはぎ取っておきたかったのです。
事実、アメリカが中国と戦争になるようなことになれば、軍事費で国が転覆するだろうと見込むほど中国を脅威に思っているのです。
アメリカ政府やトランプ大統領自身もレイダリオが言う急成長・栄華・衰退の最後のフェーズに入っていることは分かっていると思います。だから中国との戦争はなんとしても避けておきたかったのです。
ですから当初トランプ大統領は関税を発令することで世界経済が不安定になれば世界最高峰の安全資産であるアメリカ国債が大量に購入されるであろうと予測していました。こうすることでアメリカ国債の利回りを下げて利払い費を少なくしたかったわけです。
しかしながら真逆の現象が起こり、アメリカ国債の大量売りが起こり、アメリカ国債の価格が暴落して利回りが上がってしまったのです。
トランプ大統領が関税発令を延長したり挙動不審な言動を繰り返したのも、アメリカ国債を売られては困るからです。売られては利払いが増えますから何としてでも防止せざるを得ず前言撤回、朝令暮改のようなことが繰り返されました。
Make America great againという言葉の本質は、アメリカの製造業を復活させるところにあります。
オランダの造船業の先例にあったように、製造をアウトソーシングすれば経済が空洞化することを危惧し、関税という力技で何とかしようと思っていたのかもしれません。
アメリカが現在のグローバリズムを手動してきたのは間違いなく、アメリカのIT企業はまさにそれを担ぎました。
世界に拠点を移し、他国で税金を逃れているアメリカのIT関連企業が世界中から非難を浴びせられています。
現地で売り上げを立てずにアメリカで売り上げを立てるような仕組みを構築していたことが多かったからです。この点についてはトランプ大統領はほぼ触れていませんのでさらに世界中が憤慨しています。
しかし実際アメリカで貧困が広まっているという声をよく聞きます。そしてアメリカ国民のアメリカ政府への信頼も失墜しています。
アメリカの雇用統計などからは失業率は横ばい程度で、アメリカ経済にまだ破壊的で復活できないようなダメージは起こっていないものの、アメリカドルの信頼はこれでガタ落ちしました。
かろうじて大きな内紛や戦争は起きていませんし、これでダメになるようなアメリカではないと思います。
レイダリオが言う3つのフェーズを繰り返す大国の興亡のサイクルの末期に達していますが、数十年はアメリカが覇権を保ったままだとも思います。
これは裕福な覇権国がほかの国に権力を明け渡す移行期兆候です。
覇権国の急成長・栄華・衰退のパターンと米中のゆくえ
大国の栄華衰退は(生産性、債務管理、基軸通貨)という経済的な要素が大きくそのほかは政治の安定性、軍事力で決まります。
覇権を勝ち取った国は世界中の人からお金を集められるという特権を持ちながら、借金を抱えることにもなりますので、繁栄期に債務を膨らませ、最終的に通貨や信用の危機に直面に直面します。米ドルの基軸通貨地位の揺らぎのようにです。
米中のように 大国どうしの対立が起こったり、二極化など富の格差が激化すると、戦争や通貨制度の再編が起こりやすくなります。
このアングルから見える 未来のシナリオ はこうです。
米中は関税によって熾烈な争いを続けるでしょう。経済・技術・地政学で全面的に争うはずです。ここから見える- 新たな世界秩序は米・中・EU・新興国連合など多極化の可能性が高いのではないでしょうか。
日本人が取るべき資産形成のアクション
「米中のパワーシフトと債務危機が世界秩序を変えています。歴史のサイクルから学べ」という警告でもあります。
アメリカが現在ビッグサイクル のどの段階にあるかを知ることは重要です。
今すぐアメリカが破綻するようなことはありませんが、アメリカに覇権があとどのくらい残っているのかを考えて次のアクションを考えることはさらに重要でしょう。
レイ・ダリオが提示したアングルを踏まえつつ日本人が資産形成を考えるとき、「経済基盤の強さ」「地政学的安定性」「将来の成長ポテンシャル」の3点を抑えることをおすすめします。
①米ドルは依然として世界の基軸通貨を維持
米国経済はなんだかんだ言って強くレジリエンス回復力も強いです。
今や世界一の石油の産油国でありエネルギー持久力は高い、そして技術革新力も備わっています。
リスクはアメリカドルが基軸通貨であるという特権から生まれているGDP比120%超の債務です。
レイ ダリオはアメリカは長期的に見れば衰退確定を視差していますが、短期~中期ではアメリカドルの手堅い資産性は廃れないとしています。
②なんだかんだ手堅いユーロ通貨
EUの経済規模は世界GDPの約15%で政治的安定性はあります。
リスクはイタリアやギリシャなど南欧諸国が抱える債務が大きく加盟国間の格差が広がっている点です。 - 地政学的リスクとしてウクライナ戦争が挙げられます。
③日本円・破綻リスクは低いが泥船同然
対外純資産世界一位で財政破綻リスクは低いです。自国通貨建て国債を持ち、通貨の発行もできるからです。
リスクは 日銀が国債利回りについてコントロールの限界に来ている点、そして人口減少と成長力の弱さにあります。
④ 新興国通貨を選択的にポートフォリオに加える
フィリピンのGDPは6%超、人口ボーナス期にあります(平均年齢24歳)この先50年の経済成長が見込まれています。こうした有望視される国の通貨を初期の段階でポートフォリオの10%程度加えておきましょう。
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メキシコペソは仮にアメリカからの関税が緩和されたならば 米国への近接性(貿易協力で需要が高まるかもしれません。リスクとしては政治不安です。
LCFPからのアドバイス
通貨の分散が必須の時代です。一つの通貨に依存せず、「米ドル+ユーロ+新興国」でバランスを取ることをおすすめします。
資産の中に金ゴールドを組み込むのもよいでしょう。有事の時に金は強いです。
短期的には「米ドル・ユーロ」を維持しつつ、長期的には新興国通貨を加えるのが現実的です。
ただし、「どの通貨も絶対的に安全」とは言えません。定期的な見直しが不可欠です。
1,700年から750もの通貨が 存在してきましたが 現在存在するのは その20%未満だと言います。
国の強さと通貨の強さはほぼ同じですから、弱体化している日本円だけを持つのはあまりに危険。
国内にいる分には困ることは無いだろうと思うかもしれませんが、しかし経済が弱体化して日本では経済的な収益が上がりにくいわけですから、外貨で収益を生むくらいしか方法がなくなってしまいました。
レイダリオは繰り返される歴史には、 登場人物の服装とテクノロジーだけが違うことで、栄華衰退の過程は同じだと言います。
現代社会をサバイブするために知識や技能を増やし学び しっかりとした人格 礼節労働倫理を持つことの重要性も伝えているのが興味深いです。
