
法人の利益が出過ぎた場合の節税方法を探しているとき、多くの税理士は保険や共済・安易な経費計上を挙げます。それは実は単なる「納税の先送り」や「キャッシュの浪費」に過ぎないケースがほとんどです。
筆者は2019年法人税法改正前の時代に法人の節税業務にかかわっていました。この立場から10年後、20年後に「自由な現金」を最大化するための唯一の法人の利益が出過ぎた場合の節税方法・出口戦略をお伝えしています。
Contents
法人の利益が出過ぎたときの節税方法
「今期、想定外に利益が出過ぎてしまった」という際、多くの税理士や会計ソフトが提示するのは以下の4つのグループ。注意したいのは「利益を消す」ことには成功しても、「資産を残す」ことには失敗しているケースがほとんどという点です。
| 資産性 | 節税の質 | 出口の税務 | インフレ耐性 | |
| ①少額資産 | 資産性ゼロ | 端的な経費計上 | なし・消費して終わり | 最弱 |
| ①不動産 | 国内:懸念有 海外:場所次第 | 分離課税20% | 維持〜上昇期待 | 海外の場合は大いに有 |
| ②共済・保険 | 契約直後はない 10~15年超で微増 | 税の繰り延べ | 雑収入:法人税清算 | 長い固定で耐性が低い |
| ③給与・賞与 | 50%以下 | 資産の移転 | 所得税社保三重苦 | 個人は運用次第 |
| ④経費 | ゼロ:消費 | キャッシュの流出 | なし:消費して終わり | 最弱 |
注意点と具体例
| 注意点 | 具体例 | |
| ①資産・投資 | 国内不動産は価値が年々下落するため、帳簿上の節税額以上に「資産価値」を減らしてしまうケースが多いのが現状。海外不動産で場所やその国の制度を駆使するとこの課題をクリアできる場合がある | 不要な在庫や固定資産の売却損(除却損)の計上・不動産投資 |
| ②共済や保険 | 経営セーフティ共済は手堅いが、解約時には「雑収入」として全額課税される。「出口(解約時)」に赤字が出ているか、大きな退職金を作る予定がなければ、単に納税を先送りするだけ | 経営セーフティ共済(倒産防止共済)・法人保険の加入 |
| ③給与や賞与 | 社員への還元は社会保険料の負担も増える。役員賞与は個人の所得税・住民税(最大55%)と社会保険料を直撃。法人の実効税率(約30%〜)より高い税率を個人で払うのは、「トータルの税負担を増やしている」という皮肉な結果になりがち。 | 決算賞与の支給・役員報酬の増額 |
| ④経費の計上 | 端的にお金の消費。「100万円の税金を払いたくないから、100万円の不要な買い物をする」という本末転倒な状況に陥っていないか注意を要する。 | 広告宣伝費・消耗品・30万円以下の少額備品健康診断・端的なリフォーム |
重要なのは利益が出過ぎたときに「どんな意図で節税をしたいか?」です。
【節税意図を明確にしてみる】
- ④で出費をして利益を消せたらいいのか?
- ③で個人賞与に付け替えて個人重税を甘んじて受け入れるか?
- ②で出過ぎた利益の規模感に合わない共済掛金枠内で妥協するか?
①資産による節税の手法:その「出口」と「事実」
「資産による節税」は、法人の貸借対照表を強くするための戦略として活用できます。※経費で利益を消す節税とは一線を期すものです。
しかし多くの経営者が「節税になる」と言われて取り組む手法には、出口で資産を減らしてしまう大きな落とし穴があります。以下代表的な資産対策のメリットデメリットを明らかにします。
①‐1 少額減価償却資産・設備投資
決算間際に「全額損金」という言葉に誘われて購入するケースとして多い対策が、少額減価償却資産・設備投資です。節税をしているつもりが「実態は資金流出」に近いケースは多々あります。
- メリット: 30万円未満の資産や特定の優遇税制(中小企業経営強化税制など)を活用して、一括または早期に償却できる。
- デメリット: 物自体が「事業に不可欠」でない限り、単なるキャッシュの流出となりやすい。
趣味に近い動産投資
- キャンピングカーやトレーラー: 広告宣伝や福利厚生目的で導入されるが、維持費が高く数年後の売却価格は期待ほど残らない
- クルーザー・プレジャーボート: 福利厚生費として計上されるが、税務署のチェックが非常に厳しく否認されるリスクと隣り合わせ。
「節税商品」投資・レンタルスキーム
一時期の足場レンタルやドローンレンタルのように、購入した資産を業者に貸し出して賃料を得る仕組み。
- コンテナ投資: 輸送用コンテナを購入、レンタル収納スペースを運用。
- コインランドリー機器: 経営強化税制などを活用して一括償却を狙う。
- LED照明・太陽光パネル: 「環境配慮」を名目に即時償却を狙う。売電価格の下落や設備の陳腐化が早いため、投資回収のハードルは高い。
IT・オフィス関連
「いつか使うから」という理由で、過剰にスペックを上げるケース。
- ハイスペックPC: 30万円未満の枠(少額減価償却資産)を使い切り、全額損金化。
- 高級オフィス家具: 1脚30万円弱の椅子を人数分揃えることで、数百万単位の経費の計上※好きなら問題なし
- 自社アプリ・ソフトウェア開発: 開発費を「研究開発費」として一括計上されやすいが、資産計上を求められることが多く税務判断が分かれる
出口の事実: 上の3つの手法は買った瞬間に中古市場での価値が激減します。5年後に売ろうとしても転売はほとんど見込めません。「資産の置き換え」と言うよりは、実質的な経費の計上に近い節税です。
①-2 在庫の処分
売れ残った在庫を処分して損失を確定させる節税対策。実態としては 100円で仕入れたものを50円で叩き売る、あるいは廃棄するといった手法です。
在庫を叩き売ったとしても浮く税金は微々たるもので効果は実感しにくく、その微々たる実感にかける時間とエネルギーが見合うかどうかも検討すべき。
確かに帳簿上の利益は減り税金も少し安くなるものの、それは「失敗した仕入れ」をゴミ箱に捨てる作業。意味合いとしては単なる「過去の清算」に近く、貸借対照表からマイナスを消す作業であり会社を強くする対策とはなりません。
①-3 国内不動産・海外不動産
国内不動産投資:中古木造・ワンルームなど
「減価償却費で節税」の代名詞ですが、「日本の市場構造自体」がリスク
- メリット: 建物比率を高めることで帳簿上の大きな赤字を作り、本業の利益と損益通算できる
- デメリット: 日本では「建物は古くなれば価値がゼロになる」という評価が根強い
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出口の事実: 節税のために償却を急げば急ぐほど、帳簿上の価値(簿価)と実際の売却価格の差が縮まります。都内の不動産市場だと高騰後のバブル崩壊リスクが懸念され、そして地方の物件だと「出口で買い手がつかない」「大幅に値下がりする」リスクが高く、「節税した額以上に、売却損で現金を失う」という本末転倒な結果になりがちです。
海外不動産:イギリス・アメリカ
「節税」を目的としつつ、唯一「資産の維持」を狙える領域
【メリット】
- 英国: 制度や法体系で築100年超でも価値が維持・上昇、償却期間が終わっても「出口」で元本以上のキャッシュを回収できる可能性が高く事例も豊富
- 米国: 1031 Exchange(買い換え特例)により、売却益への課税を次の物件にスライドさせて資産を増やし続けられる。
【デメリット】: 為替リスクや、現地の管理・税務が日本とは異なる。
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出口の事実: 海外不動産による節税対策が他の資産対策と決定的に違うのは、出口が「消費」や「税の繰り延べに過ぎない対策」ではなく、「分離課税による低税率での現金回収※」または「非課税での再投資」である点です。
※役員報酬などの通常の所得は過累進税率で住民税を含めると最大で約55%持っていかれます。一方不動産の譲渡所得(5年超の保有)はどれだけ利益が出ても、他の所得とは切り離して計算されます。税率は一律で約20%(所得税15%・住民税5%)です。
ドローン・高性能パソコン・コンテナ投資など「出口になってみて消費にすぎなかったというパターン」を多くの経営者が経験します。本当の意味での資産対策とは、「帳簿上は経費として利益を削りつつも、実態としては価値が落ちない(あるいは上がる)場所に現金を移動させること」です。
「利益が出過ぎた」という贅沢な悩みを、単なる「納税の先送り」で終わらせるか、将来の「強い外貨資産」に変えるか。その分かれ道は「出口での資産の残存力」を直視できるかどうかにかかっています。
②共済や法人保険
共済や法人保険は利益が出過ぎた際最も「検討しやすい」のがこのカテゴリーですが、落とし穴があります。
経営セーフティ共済(倒産防止共済)は「年240万円・最大800万円まで全額損金」という節税の王道です。
経営セーフティ共済のメリットデメリット・事実
- メリット: 国が運営している安心感があり確実性を感じやすい
- デメリット:解約時には全額が「雑収入」として戻ってくるため、その時に赤字(退職金など)をぶつけられなければ、単なる法人税の先送りに過ぎなくなる。
- 事実: 累積800万円という上限は、利益が数千万〜数億と出過ぎている企業にとってはあまりに効果が実感できない手法に思える
法人保険(団体定期保険・逓増定期保険など)はかつて「節税の代名詞」として持て囃されましたが、2019年の税制改正以降、その旨みは激減しました。
法人保険のメリットデメリット・事実
- メリット: 役員の万が一に備えつつ、大きな損金を作れる。
- デメリット:解約返戻率のピーク(80%〜90%程度)で解約しなければ、事実上資産の目減りが起こる。しかも返戻金にはやはり「法人税」がかかる。
- 事実: 多額のキャッシュを「解約返戻金」という形で簿外資産を作るのは理にかなっているように見えるが、税の繰り延べができる効果があるにとどまりこの意味でキャッシュを眠らせているという意味に近い。インフレ下で預けたお金がに視差の目減りが起こる
以下2019年後の法改正後の法人保険のリアルを見ていただくと、「旨味がないどころがリスクが高い」と実感される方が多いのではないでしょうか。
国内においては保険や共済は、基本的に「実質戻ってくる率(返戻率)」が100%を大きく超えることは稀です(あっても長い年月が必要)。
そして保険も共済も出口は「法人税」の対象となる雑収入であり、預けている間はインフレ下では価値が目減りしていくだけの「死に金」と化します。
今の円安や税制の壁を考えた時、保険や共済のパンフレットに書かれている払戻率に喜んで手続きを済ませてしまえば、見えない価値の目減りで会社のお金を税金支払い額よりも減らしかねません。
今後デフレに戻ることがない日本において、それだけ国内資産で完結してしまうとリスクです。利益が出過ぎて困るほどの状況であれば、通貨の分散を検討すべき規模の企業様かと思われます。
外資系保険会社の外貨建て保険の「100%超え」に隠された罠
外資系保険会社の場合返戻率が100%を超える率で提示されることもありますが、それを「年利」に直してみるとどうでしょうか?10年〜15年かけて120%になる場合、実質的な利回りは年利1%〜2%程度で、インフレ率を下回る利回りです(資産価値の目減り)。保険の仕組みは契約直後は払戻金はあってもごくわずかで長い年月をかけないと100%を超えることはないようになっています。
③給与や賞与
「利益が出たから、頑張ってくれた社員にボーナスを出そう」「自分の役員報酬を上げよう」というのは、経営者として極めて自然で真っ当な考えです。
しかし税務という冷徹なシミュレーション上では、この「給与・賞与」こそが最も効率の悪い資産移転となる可能性があります。いわゆる「所得税・住民税・社会保険料の三重苦」です。
「利益を分配する」という行為が、いかに政府への「上納金」を増やしているか数字で直視してみましょう。
「手取り」の絶望的な少なさ
利益が出過ぎたからといって、役員報酬を増やしたり、決算賞与を支給したりすると、以下の負担が一気に重なります。
- 所得税・住民税: 日本の所得税は累進課税です。役員クラスであれば、住民税(10%)と合わせて最大55%が適用されます。
- 社会保険料: 会社負担分と個人負担分を合わせると、給与額の約30%に達します。
- 計算の現実:
会社が「1,000万円」の利益をボーナスとして出そうとすると、会社はさらに約150万円の社会保険料を負担します。
一方で、受け取る個人は所得税と社保で半分近く引かれ、手元に残るのは500万円程度。
「1,150万円のコストをかけて、個人の手元には500万円しか残らない」。これが給与による分配の正体です。
法人税を払った方が「マシ」という逆転現象
現在の日本の法人税の実効税率は、約30〜34%(規模による)です。
- 法人に置く: 100の利益に対し、税金を引いて66〜70が残る。
- 個人に出す: 100の利益に対し、最大で50以下しか残らない。
「法人税を払いたくないから給与で出す」という判断は、多くの場合、「より税率の高い場所へお金を投げ込んでいる」という、本末転倒な結果を招いています。
社員や自分への還元は大切です。しかしその半分を国に寄付する必要はありません。利益が出過ぎた際安易に「給与」という出口を選ぶのは、国が最も喜ぶ(税率55%+社保)出口をまっしぐらに進んでいることと同義です。
「利益を出す力」がある企業だからこそ、出口での「税率の差」が、10年後のオーナー一族の資産残高に数億円の差を生み出すのです。
④経費を計上
経費による節税の正体は、「手元のキャッシュを外部へ放出し、その見返りに税金を少しだけ負けてもらう」という等価交換です。
法人税の実効税率を約30%とすると、100万円の経費を使うことで減る税金は30万円です。本来なら払わなくてよかった70万円の現金を社外へ流出させたにとどまり、経費による節税とは、「国に30%の補助金をもらって、いらない買い物をしている」状態に他なりません。
一般的に推奨される経費計上には、以下のようなものがあります。
- 広告宣伝費の前倒し: 将来の売上に繋がるなら「投資」ですが、枠を埋めるだけの無策な広告は「浪費」です。特に世界的にWEB広告費は高騰しつつあり、高騰に見合う結果を見つける重要性を見出すべきです。
- 社員旅行・福利厚生: 社員の士気は上がりますが、翌年以降も継続を期待してしまうのが人間のサガです。
- 消耗品のまとめ買い: 倉庫を圧迫し、管理コストを増やします
- 健康診断:健康を買ったという満足感はある。しかし一人10万円の人間ドックを社員20人に受けさせたところで、経費は200万円に過ぎない。利益が出過ぎた企業の規模感に合うのかが重要。
- 資産性のないリフォーム:社内が新しくなるのはすがすがしいですが、帳簿上で見れば端的な経費に過ぎません。
これらに共通するのは、「使った瞬間に価値がゼロになり、二度と現金には戻らない」という「消費」の側面です。
納税を避けたいからといって、不要な領収書を集めても意味がありません。経費による節税はいわば「30%引きのクーポン(納税の回避)を使って、経費としていらない物を買っている」ようなものです。
利益が出過ぎている優良企業が本当にすべきは、お金を「使う(消費)」ことではなく、「経費として落としながらも、手元に価値を残し続ける(資産変換)」こと。
たいていの経営者が冷静になると「消える100万よりも残る100万円」に舵を切るものです。
お問合せ・その節税、10年後の「購買力」まで計算されていますか?

「保険の繰り延べも、社保に消える賞与も、インフレ下では「実質的な資産価値の没収」に過ぎません。
経営者が本当にに必要なのは「利益を消す」ことではなく、分離課税と外貨成長を使い出口まで計算し尽くされた「資産の置き換え」と思われます。
数億円の差を生む「英米不動産」による出口戦略。その具体的なスキームを完全審査制の窓口でお伝えします。「資産を残す節税の世界で生きてきたプロ」の知見を、あなたの「攻めの資産防衛」にご活用されてみてください。
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